その若い美しい娘さんは、とてもよく落ついて明瞭に次のような奇妙な物語りを話し出した。
「ホームズ先生、――父は亡くなりましたが、ジェームズ・スミスと申しまして、
古い帝室劇場の、オーケストラのコンダクターをしておりました。そして私は母
と二人生きのこったのでございますが、私たちには、身寄りの者と云うものも無
く、ただラルフ・スミスと云う叔父が一人あるだけでございましたが、
それも二十五年も前に、アフリカに渡って行ったっきり、その後は何の消息もご
ざいませんでした。父が亡くなった時は、私どもは大変貧乏でしたが、
ある日私どもは、タイムス紙上に私たちの住所を求めている広告が出ていたとき
かされたのでございました。まあ私たちの喜(よろこび)は御想像にお委せしますが、
実は私たちは誰か私たちに遺産でものこしてくれたのかと、本当に喜びました。