私の友人はこう云いながら、その婦人の顔を静かに、燈火(あかり)の方に向けた。
「これはタイピストには見られないものだ。この御嬢さんは音楽家さ」
「その通りでございます、ホームズ先生、私は音楽を教えておりますの」
「それも田舎ででしょう、――あなたの御血色では、――」
「そうです。サーレーの外れの、ファーナムの近くでございます。」
「それはとても美しい近郊ですな。私どももあの地方にはたくさんの面白い聯想(れんそう)
を持っていますよ。そらワトソン君、俺たちがあの文書偽造犯人の、
アーチェ・スタンフォードを捕えたのは、あの近所だったよ。
さてヴァイオレットさん、そのサーレーの外れのファーナムの近くに、
どんなことがあったのですかお話し下さい」